キャリアコンサルティングに、なぜこんなにも沼るのか?

執筆者プロフィール
いぞ先生 TA(ティーチングアシスタント)・講師
事業会社にて人事業務・キャリア支援の経験を17年。キャリア関連では、産業カウンセラー、1級キャリアコンサルティング技能士、国家資格キャリアコンサルタント、メンタルヘルス・マネジメント検定I種(マスターコース)等を取得。2024年よりキャリアドライブのキャリアコンサルタント養成講座で講師 兼 TAを担当。愛猫(カウンセラー)に毎日癒されている。
みなさんは、「キャリアコンサルタント」という仕事にどんなイメージを持っていますか?
「人の悩みを聴くのは、責任が重くて大変そう……」
そんな風なイメージがある方も多いのかもしれません。
しかし、キャリアコンサルティングという世界は、一度足を踏み入れると、抜け出せないほどの中毒的な面白さ、奥深さがあります。なぜこれほどまでに、この世界は人を惹きつけるのか。その奥深さと面白さについて現場のリアルな視点から詳しくお話しします。
1.「現場検証」の先にある、気づきの瞬間

私がキャリアカウンセリングに「はまった」最大の理由は、面談の中で空気が一変するあの瞬間にあります。私は面談中、よく「現場検証」のような問いかけをします。
「その時、具体的に何が起きたんですか?」
「相手はどんな表情で、あなたはどんな気持ちでしたか?」
と、ちょっとしつこいくらい丁寧に。一見、キャリアに関係なさそうな細かい事実を積み上げていくと、相談者の表情が変わるときがあります。
「あっ、今、気がついたんですけど……。私、ずっと上司に認めてもらいたいと思ってたけど、本当は自分自身を許したかっただけなんですね」
相談者が、自分でも気づいていなかった本当の自分と出会う瞬間。人の心の深淵に触れるような、気づきの瞬間に立ち会えることが、何物にも代えがたい喜びです。
2.「分かった気」を捨てたときに見える、新たな世界
キャリアカウンセリングが面白いのは、どんなに経験を積んでも「正解」がないことです。むしろ、経験を積むほど「簡単に分かった気になってはいけない」という謙虚さが求められます。かつての私は人事としてのさまざまな経験から、つい良かれと思ってアドバイスをしたくなっていました。「私の時はこうだったよ」「こういった場合はこうした方がいいかも」と。
でも、それでは相談者の心は動きません。また、自分の失敗談を話して慰めようとするのも、実は相手を自分の土俵に引っ張り込んでいるだけで、本質的な解決にはならないんですよね。
キャリコンの面白さは、自分の「正しさ」や「頑なさ」を脱ぎ捨てて、まっさらな状態で相手の世界に潜り込むことにあります。
「この人はなぜ、この言葉を選んだんだろう?」
「なぜ、今このタイミングで声が震えたんだろう?」
まるでミステリー小説を読み解くように、相手の言葉の裏にある背景を一緒に探索していく。自分の考えが柔軟であればあるほど、相談者の世界が見えてくる時があります。自分の固定観念が崩される快感。これが、キャリコンという仕事の奥深さです。
3.「温かさ」と「冷静さ」のバランス感

あくまで私見ではありますが、キャリコンで活躍している人は、どこか「二重人格」みたいなところがあると思うのです。相談者の苦しみや悩みに100%寄り添い、熱いハートで共感的理解を示しつつ、頭の片隅では冷静に状況を分析している「もう一人の自分」がいる。この矛盾した状態になることが、カウンセリングの難しさと面白さです。感情にどっぷりはまりすぎると、二人で沼に沈んでしまいます。逆に、冷めすぎていると相談者は心を開いてくれません。
「優しさを持ちつつも、一歩引いて適切な距離を保つ」
——この綱渡りのようなバランス感覚が必要なんです。
人間という複雑な存在を、熱情と理性の両方で受け止める。これほど知的なエネルギーを使い、かつ感情を揺さぶられる仕事は少ないかもしれません。
4.最後に整理すべきは「気持ち」
長年やってきて感じるのは、キャリアの悩みであっても結局のところ感情の整理に集約されることが多いということです。頭では今の職場は条件がいいから残るべきだと分かっていても、心が「嫌だ、苦しい」と叫んでいる。その時、いくらスキルの棚卸しをしても、あまり意味をなさないことが多いです。相談者が蓋をしてきた「見たくない感情」「認めたくない自分」に、キャリアコンサルタントが伴走して一緒に触れにいく。信頼できるパートナーが隣にいることで、相談者は初めて、一人では乗り越えられなかった感情の波を越えていくことができます。相談者のキャリア(人生)の核にあたる感情に触れる仕事。それは、相手の人生の「分岐点」を一緒に歩くようなものです。その責任はとても重いですが、だからこそ非常にやりがいもあると思いませんか。
資格取得は「沼」への入り口
皆さん、ここまで読んでいただきありがとうございます!
最後に一つだけお伝えしたいことがあります。この世界に「はまる」ということは、学び続ける楽しさを知るということです。キャリコンのスキルは、資格を取ったら完成ではありません。むしろ資格は「学び始めてもいいですよ」という入場許可証のようなもの。自分の癖は自分では見えませんから、定期的にお師匠さん(スーパーバイザー)に自分の面談を見てもらい、「あ、自分はまた頑固になっていたな」「分かった気になっていたな」と、自分自身を振り返りながら磨いていく必要があります。
でも、安心してください。素質以上に、この継続的な訓練こそが、あなたを本物のプロにします。そして、学べば学ぶほど、どんどん面白くなっていきます。私たちキャリアドライブの講師やTAはいつも皆さんに寄り添いながら楽しく学びをサポートし続けます。「キャリアコンサルティングに沼る」ということは、人間という存在の深さと不思議さに、一生魅了され続けるということです。まじめすぎて苦しくなることもあるかもしれませんし、自分の非力さに落ち込む夜もあるでしょう。でも、自分の弱さを見せられる人間味のあるあなただからこそ、相談者は安心して「本当の自分」をさらけ出せるのです。面談を通じて今でも新しい気づきがあります。
もし、あなたが「誰かの人生に本気で向き合ってみたい」と思うなら、「キャリコンの沼」に、ぜひ飛び込んできてください。そこには、どんなビジネス書よりも面白い、生身の人間ドラマが待っていますよ。
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